健康のために歩こうと思っても、仕事や天候の影響で8,000歩に届かない日もあるのではないでしょうか。歩数計を見て「今日は運動できなかった」と感じ、そのまま何もしなくなる方も少なくありません。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人の身体活動の目安として1日約8,000歩相当が示されています。同時に、個人差を踏まえて強度や量を調整し、今より少しでも多く身体を動かすこと、座りっぱなしの時間を長くしすぎないことも勧められています。

8,000歩は大切な目安ですが、達成できない日はゼロという意味ではありません。歩数を増やす方法と、座る時間を細かく中断する方法を組み合わせましょう。

8,000歩は「すべて散歩する」という意味ではありません

厚生労働省のガイドでは、1日約8,000歩という目安について、歩行に相当する身体活動だけでなく、家事などの生活活動も含めて説明しています。まとまった散歩だけで8,000歩を達成する必要はありません。

通勤で駅まで歩く、店内を移動する、洗濯物を運ぶ、階段を上るといった動きも1日の身体活動に含まれます。歩数計に表示される数字だけでなく、どのように身体を動かしたかまで振り返ることが大切です。

また、目安は全員が同じ日に必ず達成するノルマではありません。体力、仕事、天候、痛みの有無などによって、取り組める量は変わります。現在の歩数が少ない方は、いきなり8,000歩を目指すより、まず普段より少し多く動ける方法を探しましょう。

歩数だけでは見えない身体活動

歩数計は分かりやすい一方、すべての活動を正確に表すものではありません。掃除、洗濯、階段、荷物運び、立ち仕事、筋力トレーニングなども身体活動です。

スマートフォンを机に置いたまま家事をすれば歩数に反映されにくく、筋力トレーニングも歩数はほとんど増えません。それでも、安静に座っているより身体を使っています。

そのため、「歩数が少ない=何もしていない」と決めつけず、何分座っていたか、何回立ったか、筋トレをしたかなども一緒に見ます。

座りっぱなしが長くなりやすい場面

座位行動とは、座ったり横になったりして過ごす、エネルギー消費が少ない覚醒中の行動を指します。代表的なのは次のような時間です。

  • デスクワーク
  • 車での移動
  • テレビや動画の視聴
  • スマートフォンの操作
  • 読書や手芸

どれも悪い行動ではありません。問題は、同じ姿勢が長時間続き、身体を動かす機会が極端に少なくなることです。

今日からできる「座位ブレイク」

1.30分ごとに一度立つ

仕事に集中すると、2〜3時間座り続けることがあります。まずは30分ごとに一度、立ち上がるきっかけを作ります。

タイマーを鳴らす、飲み物を少量ずつ取りに行く、プリンターを離れた場所に置くなど、自分が忘れにくい仕組みを使いましょう。立ったら、その場で足踏みを10回するだけでも構いません。

2.電話は立って行う

オンライン会議のすべてを立って行うのは難しくても、音声だけの電話や短い打ち合わせは立って行える場合があります。毎日ある行動に「立つ」を結びつけると、忘れにくくなります。

3.トイレのあとに遠回りする

トイレから戻るときに廊下を一周する、別の階のトイレを使うなど、30秒〜2分の歩行を足します。短い移動でも、1日に何度か重なると座る時間を分けられます。

4.家事をまとめすぎない

効率だけを考えると、洗濯や片づけを一度に済ませたくなります。運動不足が気になる日は、洗濯物を少しずつ運ぶ、食後に台所を片づけるなど、家事を身体活動の機会として使えます。

5.テレビの区切りで動く

番組の区切りや動画1本が終わるたびに、立って肩を回す、スクワットを5回する、水分を取りに行くなど、ルールを一つ決めます。長い運動時間を確保しなくても実行できます。

歩数を増やすなら「一度に」ではなく「合計」で考える

30分の散歩が難しい日は、朝5分、昼10分、夕方5分などに分けます。運動着に着替えなくても、次のような方法があります。

  • 駐車場で少し遠い場所に停める
  • 買い物の前に店内を一周する
  • 昼休みに建物の周りを歩く
  • 家族との会話を散歩しながら行う
  • エレベーターの一部を階段にする

「30分取れないから0分」ではなく、「今日は合計10分増やす」と考えます。

生活場面に合わせて座る時間を分ける

座りっぱなしへの対策は、特別な運動メニューを増やすことだけではありません。長く座りやすい場面を先に見つけ、その直後に短い動きを組み合わせると実行しやすくなります。

デスクワークが多い日

メールを1件送ったら立つ、オンライン会議が終わったら飲み物を取りに行くなど、仕事の区切りを合図にします。集中を妨げないように、毎回長く歩く必要はありません。立って姿勢を変え、数十秒動いてから仕事へ戻るだけでも、座り続ける時間を分けられます。

車での移動が多い日

運転中に動こうとせず、安全に停車してから身体を動かします。目的地に着いたあとに駐車場を少し歩く、休憩時に立って足首を動かすなど、移動の前後を使いましょう。長距離を運転する日は、休憩のタイミングもあらかじめ決めておくと忘れにくくなります。

自宅で過ごす時間が長い日

家事を小分けにする、テレビや動画の区切りで立つ、別の部屋まで物を取りに行くなど、生活の動線を使います。運動のための時間を新たに確保しにくい日でも、普段の行動へ短い動きを足すことはできます。

立ち上がることが難しい日

痛みや体調によって立つことが難しい場合は、無理に立ち上がる必要はありません。厚生労働省のガイドでも、立位が難しい方は、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、可能な範囲で身体を動かすことが示されています。

椅子に座ったまま足首をゆっくり動かす、肩を回す、姿勢を変えるなど、その日にできる動きを選びます。動くことで痛みや強い不調が出る場合は中止し、自己判断で運動量を増やさず、医療機関などへ相談してください。

歩数と座位ブレイクは別々に確認する

歩数が多い日でも、仕事中に何時間も連続して座っている場合があります。反対に、歩数が少なくても、家事や立ち仕事でこまめに身体を動かしている場合があります。そのため、歩数だけで1日を評価せず、座りっぱなしを中断できた回数も分けて確認します。

例えば、平日は「昼までに2回立つ」「午後に3回立つ」、休日は「動画が終わるたびに動く」のように、生活に合わせて目標を変えて構いません。達成できなかった回数を責めるのではなく、どの時間帯なら動きやすかったかを見つけるために記録します。

最初の目標は、現在の生活から大きく離れすぎないものにします。普段ほとんど中断できていないなら、まず午前と午後に1回ずつ立つところから始めます。すでにこまめに立てているなら、昼休みに5分歩くなど、次の小さな行動を加えます。できた日が増えてから、回数や時間を少しずつ調整しましょう。

筋力トレーニングも組み合わせる

歩くことは取り組みやすい身体活動ですが、筋肉に抵抗をかける筋力トレーニングには別の役割があります。厚生労働省のガイドでは、成人に週2〜3日の筋力トレーニングも推奨されています。

自宅では、椅子からの立ち座り、壁に手をつく腕立て伏せ、かかとの上げ下げなどから始められます。痛みがある場合は無理に行わず、専門家や医療機関へ相談してください。

記録するなら3項目だけ

毎日の記録を複雑にすると続きにくくなります。まずは次の3項目で十分です。

1. 歩数 2. 座りっぱなしを中断できた回数 3. 筋力トレーニングをしたか

8,000歩に届かなかった日でも、座位ブレイクが8回できた、スクワットを行った、と確認できます。できた行動を可視化すると、翌日も続けやすくなります。

記録は1日だけで判断せず、まず1週間続けてみましょう。平日と休日では行動が違うため、数日分を並べると、座りやすい曜日や時間帯が分かります。そのうえで「午後の会議後に立つ」「帰宅後に5分歩く」など、変えやすい行動を一つだけ選びます。

歩数、座位ブレイク、筋力トレーニングをすべて一度に増やす必要はありません。最初の1週間は座る時間を分ける、次の週は短い歩行を足すというように、段階的に進めると生活へなじませやすくなります。

まとめ

8,000歩は健康づくりの目安の一つですが、達成できない日を失敗にする必要はありません。

  • 30分ごとに一度立つ
  • 電話や動画の区切りを動く合図にする
  • 短い歩行を1日の中で合計する
  • 歩数に出にくい家事や筋トレも記録する
  • 今より少し多く動くことを続ける

仕事や生活の中にどの動きを入れられるか分からない場合は、1日の過ごし方を書き出し、座っている時間を一緒に探すところから始めてみましょう。無理なく続く運動習慣を作りたい方は、お気軽にご相談ください。

参考文献